就労ビザの取得のための条件
最終更新日:2024年10月19日 行政書士 勝山 兼年
就労ビザが許可されるとは!?
日々、多くの方から就労ビザについてのご相談をいただきますが、日本国が外国人に対してビザ=在留資格を許可することについての基本的な概念、制度を全く理解されていな方が多くいます。そこで、外国人が日本で暮らすための在留資格制度の概念についてご説明いたします。 在留資格制度とは入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づいて外国人が日本に入国・在留して行うことのできる活動等を類型化したものです。
外国人が就労や結婚などを理由に日本で暮らすことができるのは、入管法に基づいて日本国法務省法務大臣が相当と認められた方のみです。外国人が日本で暮らすことは日本国憲法が保証する権利ではございません。日本人が日本で暮らすことは憲法が保証しております。
- 日本国憲法第25条第一項
- 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
どちらの条文にも権利を有するのは「すべての国民」とあり、それは日本国民(日本国籍者)であって、外国人には日本国憲法を適用されないことは下記とおり最高裁判決が出ております。
- マクリーン事件-昭和53年10月4日最高裁判決
- 「憲法上、外国人は、我が国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、・・・在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない。・・・更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする」
日本での就労ビザを希望する外国人が日本で行おうとする活動について、上陸のための基準(在留資格該当性・上陸基準適合性)に適合しているかどうかについて審査されます。審査をする機関は外国人が活動する住所地管轄の地方出入国在留管理局です。
相談例に、中小製造業の社長様から外国人技能実習生が真面目で良く働いてくれるので、将来も正社員として雇用し続けたいので就労ビザを取らしたいとの事です。相談に対しては、就労の在留資格は許可されないのであきらめてくださいと回答させていただいております。詳細は省きますが、技能実習生だった者は在留資格該当性や上陸基準に適合しないからです。
近年の人手不足の中、外国人の採用を考えておられる経営者も多くなっていますが、在留資格制度のおいては、誰に対してでも許可するものではなく、会社で従事する就労活動が在留資格に該当していたとしても、外国人の学歴や実務経験期間などの上陸基準に適合していなければなりません。すなわち、上陸基準を満たしている外国人を採用すれば就労ビザが許可されると考えればいいのです。
しかし、経営者の方にとって在留資格制度だけを見て人を採用するのではないでしょう。会社の利益のために貢献してくれる人材を見極めて採用するのであって、就労ビザが許可されるのであれば誰でも良いなどとは現実的にはあり得ません。また、真実として上陸許可基準を満たしている外国人であってもそれを証明することが容易ではない事もあります。
そこで、就労ビザがどのように許可されるのかを知らないと、そもそも上陸許可基準が満たされているかの証明ができるかも判らないのです。 出入国在留管理局で在留資格を審査するのが入国審査官です。
- 入国審査官とは
- 「入国審査官は,我が国を訪れる外国人の出入国審査,我が国に在留する外国人の在留資格審査,出入国管理及び難民認定法違反者に対する違反審査及び難民認定に係る調査など各種の審査業務等を行う」
在留資格審査は書類を提出することで行われます。外国人本人や採用する会社の方が出入国在留管理局に出向いて面接を受ける事などはございません。このことは、従事する業務や就職予定先への熱意などを直接訴える機会が無いのです。書類については規定の申請書などの他に、在留資格該当性や上陸基準に適合していることを客観的に示す資料も含まれます。しかし、世の中のすべての会社の業務が客観的に証明できるわけではないでしょう。また、外国人の学歴や実務経験なども、外国の制度に基づいておりますので、必ずしも客観的な証明になるとは限りません。
入国審査官には在留資格審査において広範な裁量があります。裁量の範囲で就労ビザが許可されるかどうかの結果が異なってくることも多くあります。そこで、良い結果を得るために客観的な証明の捕捉説明として、理由書や上申書、顛末書などを添付することになります。
在留資格業務を専門とする行政書士などは、在留資格該当性や上陸基準についての理解だけでなく、許可されるために必要な客観的証明資料の他、証明資料が足りない時の補足説明についても過去の経験や日頃の専門勉強会などを通じて熟知しております。
在留資格業務を専門とする行政書士などは、在留資格該当性や上陸基準についての理解だけでなく、許可されるために必要な客観的証明資料の他、証明資料が足りない時の補足説明についても過去の経験や日頃の専門勉強会などを通じて熟知しております。 採用担当者の中には、外国人採用者に従事される内容が在留資格制度において、虚偽・不法ではないとの信念で申請を自身でなされようとしている方もおられます。これまで述べてきた通り、憲法が保証する権利ではございませんので、在留資格該当性・上陸基準適合性について客観的証明書類が足りなければ入国管理局は就労ビザを許可しません。携わる労力と時間を顧慮すれば在留資格業務を専門とする行政書士に手続きの代行を依頼することがより良い選択だと思われます。
許可のための三つのポイント
- 雇用する外国人の学歴、実務経験など能力
- 外国人に従事させる職務の内容
- 雇用する会社の事業規模、業務の内容
許可を得るためには、上記の事を客観的に証明できる資料を出入国在留管理局に提出しなければなりません。しかし、必要なすべての書類が用意できることは稀で、直接に証明できる資料がない場合には、間接に証明する書類を集め、理由書などを作成し証明内容を補完することになります。 専門家である行政書士は過去の経験や事例の研究で、出入国在留管理局の審査官が求める資料を揃えることができるのです。下記にほんの一部の事例を紹介します。
申請に当たっては「申請人が自ら就労ビザに該当することを立証しなければならない」という考えが原則となっています。
雇用する企業から提出する文書もありますので、就労ビザの申請を外国人本人に任せきりにせず、十分な協力をしてあげることをお勧めします。
- 外国人材が日本で暮らすのは憲法が保障する権利ではない。
- 就労ビザのための証明は申請者側がする。
- 就労ビザの申請先は出入国在留管理局!